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第三者に見える「良質な慢性期医療」が必要―09年回顧と10年の展望 日本慢性期医療協会・武久洋三会長(医療介護CBニュース)

 「社会的入院」の温床とされ、大幅な削減を迫られてきた療養病床。2009年には鳩山新政権が介護療養病床廃止計画を凍結する方針を表明するなど、療養病床をめぐる状況は今、大きく変化している。日本慢性期医療協会(旧日本療養病床協会)の武久洋三会長は、08年4月の就任以来、「良質な慢性期医療がなければ、急性期医療は成り立たない」として、療養病床が果たす役割の重要性を訴えてきた。一方で、慢性期医療を担う施設は「診療の質」の向上に努め、それを第三者にも見える形で示すことが必要だと語る。武久会長に、政権交代など09年の動きへの感想と、今後の展望を聞いた。

■政権交代で政策決定がオープンに

―09年は介護報酬改定など、医療や介護に影響を与えることが多くありました。
 09年度介護報酬改定では、当協会が要望していた主な事項は採用してもらえました。例えば、介護福祉士の割合の評価。介護の専門職種の配置割合は、介護の質に直接影響するので、ここを評価したのはよかったと思います。在宅移行や介護予防、認知症の医療への評価が行われたのも前進です。すべてよかったとは言えませんが、初のプラス改定ですし、おおむね評価しています。実際、特に改定前から手厚い配置をしていたところなどは、経営状態が改善される傾向にあります。

―新政権が誕生しましたが、どう評価していますか。
 当協会では衆院選に先立ち、各政党に慢性期医療に関するアンケートを送付していたのですが、介護療養病床廃止計画に反対するなど、われわれの主張と同様の回答を寄せていたのは、民主党など当時の野党でした。ですから、そういう意味では当然、評価しています。
 また、今までは与党の族議員に献金をしたり、裏で交渉したりするなど、国民の知らないところで診療報酬の方向性が決められ、中央社会保険医療協議会(中医協)が行っていたのは、その「事後処理」にすぎないという様相があった。しかし政権交代で、こうした「従来型自民党政治」は完全に崩れました。今回行われた「事業仕分け」にしても、国民の目の前で堂々とやりました。中医協もオープンな論戦になりますから、「経営が大変だから点数を上げてくれ」というだけでは通らなくなるでしょう。つまり、どういう医療をわたしたちが提供し、どんな成果が出ているのか、第三者にも分かるように示すことが、より重要になると思います。

―日本慢性期医療協会は次期参院選の候補者として、安藤高朗副会長を擁立することを決めました。
 これまでにも医療関係者出身の国会議員はいましたが、病院団体から出た人はいませんでした。日本医師会などは団体として候補者を出していたわけですが、日医と病院団体では求めるところが違う。特に民間病院の主張が政策に反映されてこなかったのです。
 こうした背景から、日本医療法人協会の日野頌三会長とも話し合い、当協会の副会長であり、全日本病院協会の副会長でもある安藤高朗氏を擁立しようということになりました。病院の主張を正しく政策に反映していくためにも、当協会は全面的に推します。ほかにも複数の団体に推薦していただきたいと思っています。

―新政権は、介護療養病床廃止計画を凍結するとしています。
 09年夏までは、介護療養病床を医療療養病床や介護療養型老健に転換していく動きがありましたが、政権が代わってからこうした動きが止まりました。民主党の政策集では、介護療養病床廃止計画の中止が打ち出されているため、病院も「少し様子を見よう」と考えるようになったのです。

―今は「凍結」という状態ですが、そもそも介護療養病床は今後も必要だと考えますか。
 今は必要です。まず、医療療養病床より介護療養病床の方が、患者のニーズに合っている場合があるからです。例えば、病気などの身体的な症状に重度の認知症を合併している場合は、介護療養病床のように、より介護ニーズに応えられる施設での対応が必要です。医療療養病床では対応し切れないこともあります。
 もう一つは、医療療養病床の医療区分1に当たる患者さんの入院基本料が低過ぎるため、介護療養病床で引き受けた方がいい場合があるからです。医療療養病床の医療区分では、医療区分2、3に該当する人以外は医療区分1になるため、肝硬変で腹水がたまっている方やがん末期の方も、1日当たり8000円程度です。しかし、こうした方を介護療養病床で受け入れれば、1万3000円くらいになります。
 こうした、現状では介護療養病床で受け入れるしかない患者を、一般病床や医療療養病床で診る体制ができるなら、介護療養病床をなくすことはできるでしょう。逆に、そこにいた患者がスムーズにシフトできる診療報酬と環境を整えないと、廃止は困難です。

■シームレスな医療・介護連携を

―次期診療報酬改定に向けた議論が本格化しています。
 次期改定では、急性期、特に産科や小児科を評価することになるでしょう。今の国民の意向とも合致していますから。ただそうすると、民間の慢性期病院は「そんなに上げなくていいのでは」という論理になりかねないので、そこは危惧しています。

―日本慢性期医療協会としては、具体的にどのようなことを求めたいですか。
 質の高い医療をやっている慢性期病院は評価すべきということです。当然ですが、医療は急性期だけでは終わりません。回復期や慢性期を経て、地域に帰る。急性期病院に1、2か月入院できるなら、最初に入ったところで治して帰ることもできるでしょう。しかし、患者数がますます増えることが予想される中、急性期病院だけで治療を終わらせるのは困難です。すると当然、後を引き継ぐ回復期や慢性期の役割が重要になる。
 そういう意味で、次期改定では、質の高い医療を提供している慢性期病院も評価すべきと考えています。診療の質の指標としては、基準より手厚い人員配置やリハビリスタッフの十分な配置、在宅復帰率などが考えられます。
 かつて療養病床の中には「社会的入院」の温床となっているところも多くありましたが、06年7月の医療区分導入以来、積極的に重症患者も受け入れようという前向きな姿勢に変わってきました。今は患者をきちんと治してスムーズに地域に帰していく、病院の本来の機能を取り戻していく途上にあります。次期改定で慢性期医療の質を評価することができれば、こうした動きがさらに加速できます。

―12年には、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われます。
 12年度改定は、シームレスな医療・介護連携を実現する唯一のチャンスだと考えています。今は継ぎ目のない連携ができておらず、急性期から慢性期、医療から介護への流れができていない。ここをうまく流れるようにすれば、入院期間の大幅な短縮にもつながり、医療費削減にもつながります。
 医療について言えば、一般病床と療養病床という病床区分を廃止し、急性期、回復期、慢性期の機能を持ったところが、それぞれの機能に合った患者を受け入れるようにすべきだと思います。診療報酬も、医療スタッフの配置や設備など、機能に応じて傾斜を付ける。逆に、この同時改定で医療・介護の提供体制をシステマチックかつ大幅に変えることがない限り、日本の医療と介護の将来は非常に厳しいでしょう。

■慢性期医療を「専門分野」として確立

―今後の抱負をお聞かせください。
 慢性期医療を専門分野として確立していきたいと思います。心臓など臓器別の専門医がそれぞれの分野で素晴らしい腕を持っているのと同様、慢性期医療も一つの専門分野ですが、このことはあまり理解されていません。低栄養や脱水、貧血など、いろいろな要素が入り込んでこんがらがった状態を、一つひとつもみほぐして、まともな状態に戻していくのは大変な根気がいることで、誰でもできることではないのです。
 当協会では、慢性期医療のプロを輩出するため、08年から慢性期医療認定講座を行っています。また、良質な慢性期医療の指標づくりにも取り組んでいます。将来的には、認定講座を受講したスタッフが多数いて、慢性期医療の指標を十分に満たしている病院を「慢性期医療認定病院」とし、若い医師たちが実習できるようにしたいと思っています。
 また、慢性期医療を世界に発信していきたいと考えています。そもそも、慢性期医療が分野として確立している国は、世界でもあまりありません。10年3月には「アジア慢性期医療学会」を開く予定で、既に中国や韓国、香港、台湾からも演題が出ています。こうした取り組みを通じて、「日本に慢性期医療あり」と世界に発信していきたいと思います。


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